最近はマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトについての問い合わせが非常に増えてきました。
それだけクラウド会計の認知度が上がってきたというコト。
ただそれが「クラウド会計が会計業界のスタンダード」と言い切るにはもうちょっと時間がかかりそうです。
クラウド会計にとって大きな壁となっているのは「税理士が使いこなせるか」という点が非常に大きいですね。
会計ソフトは事業主や経理担当者だけではなく、税理士などの会計業界の人間にどのように理解してもらうかというのが重要な普及ポイントです!
税理士にとって使いやすいソフトかどうか
簿記などの会計知識のない個人事業主や中小会社の社長にとってみれば、
▼ 感覚的に操作できる
▼ ネットバンクなどのデータを自動で取り込める
といったことがカンタンにできるので、クラウド会計ソフトを使う大きなメリットになり、ます。
- パソコンなどにインストールする必要が無い
- どこにいてもクラウドにあるデータにアクセスできる
こういったポイントも評価されています。
一般的なユーザーにとっては高評価のクラウド会計ソフト。
実は会計業界の中心にいる税理士・会計士にはあまり評価が高くないんです。
なぜクラウド会計は税理士に評価されないのでしょう?
ポイント1:クラウドゆえのソフトのおもさ
ブラウザを通してクラウド上のデータを操作するのがクラウド会計の大きな特徴です。
自分の手元にあるパソコンのデータを加工するのに対して、どうしてもタイムラグがでてしまうのです。
時間すればほんの0.1秒程度かもしれないのですが、そのタイムラグに対するストレスと言うのは相当なもの。
一般ユーザーであれば一つ一つ考えながら入力するような場合であっても、私たちのようなプロが入力するときは、それこそテンキーなど見ずにひたすら右手だけ動かしているような状況です。
正直、クラウド会計ソフトを今までのインストール型の会計ソフトと同じ感覚で使おうとすると
ソフトが重すぎて使いものにならない・・・
というのが本音でしょう。
税理士の中には「クラウド会計推し」もいます。
ただほぼ全てのクラウド推しの人は「クラウド会計ソフトで入力してはダメ」と言っています。
基本的にはネットバンクなどからの自動連携、どうしても入力が必要なデータはCSVなどから連動というのが基本。
ひと手間かければ済むという話なのですが、なかなか今までのやり方に慣れた税理士にはハードルが高いのでしょうね。
ポイント2 データの検証機能が弱い
これはポイント1にも共通するのですが、クラウドにデータがあるので「データの呼び出し」に時間がかかります。
既に連動・入力されているデータの内容をチェックするためにデータを呼び出そうとすると、従来のインストール型ソフトに比べるとかなり遅いです。
一般ユーザーの人にとっては「入力しちゃえばそれでおしまい」という感じかもしれません。
ただ、データの内容に間違いが無いかどうかを確認する立場の税理士にとっては、この「データの検証機能」というのは非常に重要なポイントなのです。
お客様が作った会計データをチェックするのも私たちの仕事です。
ほぼ完ぺきにデータを作ってくれる方もいられますが、多くの方の場合は多少なりとも入力データに間違いがあります。
その間違いを探しやすいかどうかというのも、ワタシたちのようなプロが会計ソフトを選ぶ一つの基準にもなっています。
そういう意味からすると、クラウド会計ソフトはハッキリ言って「かなり使い勝手が悪いソフト」です。
データの検証性という意味では非常に使いにくい。
クラウドゆえの遅さというモノを我慢してデータのチェックが出来たとしても、間違ったデータを直すのもメチャクチャ面倒くさいのです。
私自身、クラウド会計ソフト上のデータをチェックするときはクラウド会計ソフト上では行いません。
いったんデータを吐き出してから別のアプリケーションでチェック・修正しています。
このあたりもプロである税理士がクラウド会計に踏み切れない大きな理由の一つです。
ポイント3 データの安全性への不安
クラウド会計の特徴はデータをクラウドに置いておくというコト。
クラウドサービスを使い慣れた自分たちにとってみれば、そんなことは当たり前かもしれません。
ただ、年配の税理士のなかには
クラウドにお客様の大切な会計データを預けておいて大丈夫なのか?」
という気持ちを持たれて方も多いです。新しいサービスに対する懐疑的な気持ちと言うのは強いんですね。
自分のトコロのサーバにデータを置いておかなければ不安でしょうがないんでしょう。
紙よりもデータ、自社サーバよりもクラウドの方がよほど安全だという認識になるには相当な時間がかかるかもしれません。
クラウド会計ベンダーがどう対応するか?
一般ユーザーにとっては使いやすいソフトであったとしても、税理士にとって使いやすいと言えないのがクラウド会計ソフトの現状です。
多くの税理士が「クラウド会計に対応していますよ~」と言ってはいますが、本音では「あー、使いづらいなぁ」と思っている人も多いはず。
知れば知るほどクラウド会計ソフトのダメな部分も見えてきてしまうからです。
ただ、そういうダメな部分、クレームの出ている部分と言うのは改善の余地もあるはず!
その部分を克服していけば、もっともっとプロである税理士にも支持されて普及が加速していくと思います。
私が考える一番のデメリットは「クラウドゆえのデータの重さ」です。
例えば、オフラインアプリを開発して、修正・チェックだけはデータをダウンオードしてオフラインで出来るようになればクラウドの重さは解決できるはず。
データの不安を抱える人には、自社サーバへのデータストレージなどのサービスも提供してあげればいいわけです。
(必要かどうかは別として・・・)
こういった現場への不満にも対応できるかどうかは、クラウド会計ベンダー自体が生き残っていけるかどうかのポイントだと思います。
「クラウド会計ってこんなすごいんだよ!」
なぁんて言っててもらえるうちに対応しておかないと、すぐに愛想尽かされちゃうかもしれませんよ。
まとめ
いろいろ不満を書きましたが、それをうわまわる便利な部分が多いのですよ。
ただ、まだまだ改善の余地があるからこそ苦言を申したいわけです。
最終的には一般ユーザーに支持されるソフトが生き残っていくと思っています。
そういう意味ではマネーフォワードはユーザー支持をうけていますので優位なポジションにいるわけです。
あとは「会計業界のスタンダード」になるためには、プロも満足して使えるレベルに引き上げていく必要があるでしょうね。